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2018.10.15

TP Interview 001:アスツール株式会社 代表取締役 加藤雄一(前編)

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TP Interview 001:アスツール株式会社 代表取締役 加藤雄一(前編)

人間の価値観、生き方を完全に変えるほどインパクトがある
日常的に無意識で使える『道具』を生みだしたい

自社で手がけるブラウザアプリ「Smooz」を、「自転車で言うところのロードバイクみたいなスーパーブラウザにしたい」と語る加藤氏。「人間の価値観・生き方を完全に変えるほどインパクトがあって、日常的に無意識で使える“道具”を生み出したい」とビジョンを掲げ、順調にサービスを成長させている加藤氏に、起業の背景やその根底にあるものを語ってもらった。

 

“ものづくり”に対する興味の芽生え

【インタビュアー:岡本】まずは簡単に経歴を教えてください。

【加藤氏】
略歴でいうと、新卒でソニーに入り、ソニーエリクソンに移ったのが2007年で、そのあと2008年からソニーエリクソンの本社のスウェーデンの片田舎にあるオフィスで、4年間ぐらい、グローバル向けの携帯電話の商品企画をやりました。そのあと、日本に帰国して、楽天で2年半ほど勤務し、それから1年、自分でアプリをつくりながら模索し、楽天をやめた1年後に今のアスツール株式会社を起業しました。

2001年、新卒で入ったのは、ソニーです。

起業とかそういうアイディアさえ頭になかったので、当然就職しかない

って感じだったんですよ。その中で何がやりたいかなと思っても、今ほどネットに就職関連の情報が無かったので、「自分が好きなことってなんだろう?」と考えることだけが唯一の手がかりでした。

趣味ではまっていたのがPDA(携帯情報端末)でした。アルバイトのお金をほとんど費やしたし、英語しかなかったので日本語化して相当時間も使いました。手元に、全情報が集まるのは全能感があって楽しいな、こういうのを仕事にしたいなと思ったんです。

最終的に、ソニーでPDAみたいな道具をつくる側に入りたいなと思ってソニーに決めました。今だったら起業して自分でなんかやろうと思ったかもしれないけど、当時は資金調達環境も全然違うし、起業で成功しているメンターのような人もいなかったから、環境的にやろうとしても難しかったと思います。

入社して3~4年経ったら商品づくりの仕事ができるようになりました。そこで、携帯電話の分野で働くために、ソニーエリクソンで仕事を始めたら、そこから仕事がすごく楽しくなってきました。

やってみて分かったのは、ものづくりは天職だなと思いました。

好きだけど得意じゃないみたいな部分もあるかもしれないんですけど、僕が得意だと思っているだけで、実は他の人よりすごいかはわからないけど、とにかく好きで、どれだけ仕事をしても全然苦にならないという状態になったんです。本当にこれは素晴らしい仕事だなと思っていて、それからずっと商品づくりに打ち込んで、起業もその延長線上でやったという流れです。

ここ数百年の大きな発明といえば、インターネットや活版印刷ですよね。もし活版印刷がなかったらずっと写経していることになりますからね。インターネットもしかりで、みんなが多くの情報を得ることができるようになっています。その結果、ただの情報には価値がなくなって、そこにいかに、自分の考えを入れ込むかが重要になってきているじゃないですか。

たかが道具だけど、その道具が、人間の価値観とか、生き方を完全に変えてしまった

という事例があるので、そこまで生み出せたらすごく嬉しいです。

たとえば、ゲームだけではそこまで変わらないです。メディアでも何か情報を出したからってライフスタイルは変わらない。ちょっと考え方が変わるくらい。でも、道具は人間の営みにロングスパンでマスなインパクトを与えるなと思うんですよ。

 

 【岡本】ものづくりに興味があるというのは、幼稚園や小学生の頃からですか?

【加藤氏】
図工とか、美術、書道の時間は好きでしたね。うちの親は書道家で、母親の実家は家具屋、妹は染物やっていて、なんかそういうDNAは多少あるのかもしれないですね(笑)
それがDNAによるものなのか、習慣によるものなのかはわからないですけど、物づくりは好きです。

 

 【岡本】他に小さい頃の印象的な思い出はありますか?

【加藤氏】
歴史が好きでした。歴史小説とかは小学生の頃読んでいました。漢字が読めないから予想して読んでいました。小学2年生の時の夢は、清原と一緒に西武ライオンズでプレイしたいとかですね。なんか離れているんですよね、自分の好きなことと夢は(笑)野球は明らかにセンスがなかったんで(苦笑)野球は今でも一番好きだけど、一番不得意なものです。

やっぱり好きと得意って重なるときもあれば、重ならないときもあります。
会社やるときも、好きで、得意で、人から求められているものを選ぶのがベストだと思います。

 

充実感と試行錯誤の繰り返し、起業意識の芽生え

【岡本】一番印象に残っている出来事、一番やりがいを感じたこと、逆に一番挫折を感じたこと、落ち込んだことは?

【加藤氏】
やりがいを感じた時と、挫折を感じた時というのは同じプロジェクトで、ソニーエリクソン(現ソニーモバイル)の時、最初は普通の携帯をつくっていました。普通に携帯つくると、何百万台も売れるんですよね。外に言える功績としては一番大きなものですね。

ただ、携帯電話で、毎年小さなアップデートをしていても、しょうがないよねとプロジェクトメンバー全員が思っていました。このままアンドロイドのOSを乗せた箱をずっとつくっていても、薄利多売で利益が少ない現状がありました。

この状況を打破するために新しいものをつくろうと思って、携帯電話の捉え方自体を変えるぐらいの新商品づくりを始めたんです。数億円かけていましたが、結局プロジェクトとしてはキャンセルになり、世の中の日の目をみることはありませんでした。この失敗したプロジェクトは2年がかりでしたが、最初の1年は、今までで一番エキサイティングな時間でした。

でも、後半の1年は一番辛くて失敗したというか、結果的にリリースできなかったわけで。
この時にやりがいを感じたのは、新しい価値をつくる と言うこと。
誰かがつくった鋳型に当てはめてつくるんじゃなくて、全く違う、ゼロベースでものをつくるって本当に楽しいなって思ったんです。

確かに毎年のアップデートで全然売上が変わるんですけど、それは既存市場の中でのマキシマイゼーションなんです。パイをいかに取るかではなく、新たな市場をつくるっていうのは全然違う働き方じゃないですか。

僕はやっぱりパイを取る働き方では
オンリーワンでもナンバーワンでもないなと思ったんです。

「イノベーションのジレンマ」という本に書いてあることそのまんまのことが現実で起こっていて、大企業で新規事業をやる場合、少なくとも100~200億ぐらいの売上が見込めないと、やる意味がないんです。1億円じゃ全く意味がないんです(苦笑)

でも、それがベンチャーだったら素晴らしいし、上場の可能性が十分にあるぐらいです。それだけでも大企業で新規事業を始めるのがどれだけ大変かってのがわかります。そう考えると、

大企業でやるよりも、外でやったほうが可能性があるなって思ったんです。

この頃から起業を考えました。

ものづくりの仕事を今後もやっていくなら、大企業では報われないかも、と思いました。
こうした気づきを与えてくれた会社にはすごく感謝していますし、ネガティブには捉えていません。
あの一年がなかったらここには至っていないと思うので。

 

【岡本】まさにその一年が”ターニングポイント”なんですね。

【加藤氏】
そうですね。
ちょうどスウェーデンにいた頃は時間があって、北欧ってみんな夕方5時くらいに帰るんです。
残業したとしても7時くらい。7時に帰って帰宅してカレーを作ってもまだ8時みたいな(笑)
やっぱりハードウェアじゃなくてソフトウェアでもよかったので、自分一人でつくれるものならソフトウェアが手っ取り早いなと思いました。

それで、ちょっとやってみようとやり始めてたんです。それで、やっているうちに面白くなって、ソフトウェアで起業してみようかなと思いました。
こうした経験もあって、今の起業に踏み切りました。

他にもちょうど2007年の頃のシリコンバレーのスタートアップでも、iPhoneも出てきて、Androidも出てきて、スマートフォンがどんどん盛り上がっている時期だったんです。だから、自分もこういうものづくりがやりたいなって思ったんです。

 

 【岡本】「起業しよう!」って思った瞬間はあるんですか?

【加藤氏】
ここという瞬間はないですね。いろんなものが積み重なった結果です。
例えば転職もそうですけど、「今日あいつに嫌なこと言われたからやめる!」っていうのは、それまでの積み重ねがあって許容できるバーを超えたからであり、何か一つの出来事で決まるわけではないですよね。

影響しているものでいえば、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学でのスピーチには影響されました。
あれはすべての人にとって正しいかは別として、僕はすごく共感したんです。

 

【岡本】ジョブズ以外に、影響を受けている人はいますか?

【加藤氏】
楽天にいたとき、世界で7億人ぐらいユーザーがいるバイバーっていうアプリを楽天が買収して、僕が買収した側の人間として入っていって、親会社との関係を築く仕事をしていました。僕はプロダクトマネージャーで会社は50人ぐらいの規模だったので、創業社長とも密に接することができました。

その中で、一つ気づいたのは、

「それぐらい成功した人でも、そこまで自分と大きく違うわけではないな」

と思ったんです。
話していることとやることは全然違うから、同じこと考えていても、実行するかは別次元なんですけど、確かに凄いなと思いつつも、スーパーマンや雲の上の人ではなかったんです。
意外と身近に感じたというか。すごく素晴らしい経営者だけども、自分もやってできないことはないって感じました。

 

 【岡本】起業前後で何が一番変わりましたか?

【加藤氏】
やっぱりメンタルですかね。

会社員の時もかなりオーナーシップを持って
自分のプロジェクトをやっていたつもりでした。

仕事量だけでいうと今よりも働いていました。8時に出社して、24時に帰るような生活です。
それができたのは若いのも大きかったんでしょうけど(笑)

ただ、

会社員時代は自責でやっているつもりでも、
失敗した時は「しょうがないよね」ってなるんです。

でも今は、どこにも逃げようがない(笑)もう本当に絶対に成功させなきゃいけないし、あらゆる手段を使ってでも成功するしかないのが今です。このあたりが、プロダクトの責任者と会社の責任者の違いで、やってみないとわからないんだなって思います。

 

ものづくりとの出会いから、自身の足で一歩踏み出すことを選択した加藤氏。後編では、起業初期の悩みや不安、そしてこれからを考える後輩に向けて考え方のアドバイスを語ってもらった。
(後編へ続く)

 

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起業アイデアの考え方

参考リンク:
次世代スマホブラウザ「Smooz」

 

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