手に職をつける生き方

昔から「手に職をつけると強い」とよく言われます。就職では男性よりも女性により言われます。障害者の就職でも手に職をつける指導が特別支援学校で行われます。就職にハンディキャップのある人の生きていく力になります。ハンディキャップがなくても手に職をつけることは自分の強みづくりに重要だということです。

中国人の華僑と言われる海外移住者たちに、「三刃」という手に職をつける職業があります。1つは、洋服の仕立て屋で洋服はさみを道具とします。2つには、床屋で理容はさみを道具とします。3つには、中華料理の料理人で包丁が道具です。これらの職業は生活に必要なサービスで、どこでも地域に根付いて生きていけるものです。言葉が十分できなくても、地域の人脈が乏しくても、生きる術になります。

手に職をつけると強いという言葉は現在でも生きています。自分自身どのような技術、スキルを身につけたら良いのか考えてみましょう。

 

1.手に職をつける意味と効果

手に職をつける意味は、第1に、生きる術になるということです。それを職業として食べていけるということです。第2に、それが専門職業としては成立しなくても、自分の特技として会社の中で、地域の中で役立つことです。例えば、マジックや落語が得意で人を楽しませることができる、会社の園芸部長・地域のお祭りを仕切る長老と言われることなどです。第3に、自己実現になるということです。絵画や工芸、手芸、園芸など表現に関わる分野、趣味の分野です。

いずれも精神的に生きがいや、やりがいになり自信につながります。

 

2.勤めている会社などの仕事で手に職をつけられる分野

勤めている会社の中で技術が身につく分野があればその職種に就くことはプラスです。配属されている職種が違えば、異動を希望するなど挑戦することができる場合もあります。コンピューターやWebのスキルは職種に関わらず独学でも学ぶことができます。技術に関する職種にいる人が技術を高度化し能力を身につけることは、仕事上プラスであることは言うまでもありません。その技術が他の会社でも通用するものならば転職の武器にもなります。独立できる分野であれば人生の可能性も拡大します。

リアルのアナログ技術であれば同業で修業しその後独立するのがコースです。職人的分野で、料理、建築、美容、菓子、工芸、針灸、整骨など皆そうでしょう。

 

3.職業訓練校、各種学校、専門学校などで手に職をつけられる分野

公共職業訓練講座では、製造業に関する技術、電気や機械に関する技術、コンピューターに関する技術などを学ぶことができます。主として失業時などに雇用保険の仕組みで無償もしくは低額で受講できます。各種学校には服飾やフラワーなど各種のデザイン関係の技術、貴金属やクラフトなどの工芸関係の技術、ネイル・エステなどの美容技術など多様なものがあります。専門学校には資格取得が可能な分野の理美容、調理、自動車整備、介護、健康医療、建築設計、測量などの分野があります。ただし資格取得が関わる専門学校のコースは履修期間が2年3年と長く一定の通学の必要性が伴います。働きながら学ぶ制約となります。

 

4.独学などで手に職をつけられる分野

IT関係が最大最新の分野です。システム設計、プログラミング、ネットワーク、セキュリティなど情報系の資格取得学習と兼ねて学ぶこともできます。Webサイト制作、Webデザインなどの制作分野やデザイン、動画、アニメーション、コミックなどの制作分野もあります。スマホも含めた各種のアプリケーションソフト開発やゲームなどのコンテンツ制作の分野もあります。

アナログ系でも芸術関係や料理関係なども分野により独学可能です。感性、センスが重要な要素であれば独学でも可能です。

また独学を基礎にして知人や友人、家族などの個人的な指導で技術を身につけられる場合もあるでしょう。

 

5.時代とともに滅びる技術、時代の中で生まれる新しい技術

以前あった仕事で今はなくなってしまった仕事がいろいろあります。印刷関連で写真植字(写植)という文字に関する仕事がありましたがDTPの普及でなくなりました。デジタル化でなくなりはしていませんが製版の仕事は縮小してきました。製造業で金型製作の仕事もデジタル化で変化し、3Dプリンターも出現しました。製造業ではロボット化が著しいため各種の技術職人がいなくなりつつあります。

 

アナログ技術でも人間の感性や欲望に関するものは生き残っていくのではないでしょうか。食の欲望、美の欲望、性の欲望などです。コンピューターで標準化しても欲望は納得せず、個性的なものに魅力を感ずるのが人間の本性ですから。

 

時代の中で生まれる新しい技術ではIT関係が中心です。多様なものが誕生し素人でも身につけられるものが多々あるはずです。また新技術製品の活用や操作など技術開発でなくても利用の技術の習得は障壁が低いものがあります。ドローンの操作技術者などです。ドローンの民間の講習機関や資格発行機関も誕生しています。新技術の分野は技術者養成がカギになり、技術を持った人は就職や独立開業のチャンスが生まれます。新技術は公的資格に関係する制限がなくスキル次第で道が開けます。どのような技術に目をつけるか、どうすれば技術習得が可能か、どの程度の市場性があるかが判断材料です。スキマ狙いであまり普及していない分野の例では遺体処理のエンバーミングなどがあります。

 

手に職を付けてどう活かすかが勝負です。会社内での専門力の強化で自分をアピールし社内評価や昇進昇格に結びつける、複業で自分の能力開発・副収入に結びつける、将来の独立に結びつける、などの人生の可能性の拡大につながり、サラリーマンは本業が厳しくなってきた時の自分の生き残りの武器になります。

 

<参考リンク>

フリーランスに必要なことは、鈍感力!前向きに仕事をしよう!

キャリアアップ転職で大切な5つのこと

TP Interview 007:TRICHROMATIC COFFEE 石原剛氏(前編)