独立開業前に簿記を学んでおくメリットとは

1.企業の成績と状態を把握するための能力

自分自身が求めるサービスを提供するために、独立開業を夢見る人は数多くいます。どれくらいのコストをかけて、いつ頃どの程度の規模の売り上げになって……と誰もが事業の計画を立てますが、事業を進める間の経過を把握するために必要な能力をご存知ですか?

個人事業主になった1年目のフリーランスが年度末に苦しむ確定申告。このタイミングで初めて年間の事業の記録を記帳し、自身の事業の状態を把握する事業主も多いようです。思ったよりも稼げていない、どれが事業の出費なのかわからない、そんな声も聞こえてきます。

事業における金銭収支、資産・負債の状態を記録し、事業の成績と状態を把握するためには、取引の内容を定期的に帳簿に記録すること、その記録を会計ルールに則って適切に処理することが大切。その記録と処理に必要な能力が「簿記」です。

 

2.簿記会計を学んでおくメリット

簿記会計を学んでおくことで、独立開業を目指す人や、すでに個人事業主として独立を果たしている人にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

事業を進めるにあたり、最も大きな目的がお金を稼ぐことである人がほとんどでしょう。お金を稼ぐことは、収入を増やすことももちろんですが、支出との差をつけることで、手元に残るお金を増やすことと考えられます。

簿記を使い日々の事業の記録を帳簿に残すことにより、毎月どの程度の収入があり、それに対してどの程度の支出があるのかを把握することが簡単にできるようになります。

手元にどれだけの余剰資金があるのかを把握することで、新しい事業にどの程度の出資ができるのかを計算することができるようになり、次のステップへ進むきっかけを得ることができるでしょう。

個人事業主によくある問題が、個人のお金と事業用のお金の区別がつかなくなってしまうことです。どちらも自分のお金であるといえばそうなのですが、はっきりと切り分けることで、自分自身の事業が順調なのか伸び悩んでいるのかを把握することができるでしょう。

気がつかないうちにプライベートの出費が事業用の資金を食いつぶしていたということもありえるため、随時自分で把握できることが望ましい状態です。

また、個人事業主を毎年悩ませる確定申告の処理が圧倒的に楽になります。近年では会計ソフトの発達が著しく、誰でも簡単に記帳し、帳簿を作ることができるようになっていますが、それでも帳簿の仕組みが理解できず、記帳を始めることすら困難という人も少なくありません。

それぞれの数字の性質と関係を理解しておくことで、帳簿の作成がスムーズになり、長い時間苦しむことなく手続きを終えることができるでしょう。

また帳簿の作成や確定申告の手続きを外注している場合には、その分の費用をコストカットすることもできます。もちろん工数削減のために意図的に外注している分には問題ありませんが、できないから仕方なく払っているという場合には、大きな効果を生むことでしょう。

 

3.どうやって学べばいい?

覚えておくと便利でメリットも大きい簿記の知識は、どのように学べばよいのでしょうか。

基礎的な帳簿の仕組み、勘定科目の性質を学ぶだけならば、書店で売っている参考書や問題集をつかった独学で十分身に着けることができます。

1~2か月集中的に学ぶことができれば、基礎的な知識の習得を証明する「日商簿記3級」という資格を得ることもできるでしょう。

どうしても独学で理解することが難しいならば、専門学校の講座を受けるのがよいでしょう。DVDやネット動画を使った講座もあるため、在宅でも受けられるコースも選べます。

個人事業主に必要な簿記の知識は3級の範囲で十分ですが、法人化を目指す、また会計・経理としての仕事に就きたいならば、さらに2級、1級とステップを進めていきましょう。

2級までは独学でも習得できますが、1級は専門的な会計学の知識が問われるようになるため、専門学校で学ぶことをおすすめします。

簿記は全く知らない人からすると、得体のしれない特殊技能のように見えるかもしれませんが、基礎的な知識と技能ならば、誰でも短い時間で習得できます。難易度に比べて習得するメリットが大きい技能。ぜひ一度簿記の勉強に挑戦してみましょう。

 

<参考リンク>

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TP Interview 005:株式会社家’s 代表取締役社長 伊藤昌徳(前編)