第1回では日本政策金融公庫の創業融資制度を見てきましたが、今回は自治体融資とそれを支える信用保証協会の信用保証と制度融資というものを知っておきましょう。
自治体融資の基本となる制度融資
(1) 制度融資とは
制度融資とは、信用保証協会が信用保証をすることにより成り立つ制度です。それに加えて地方自治体の都道府県や市区町村が、地域の産業振興を高めるために融資の支援をするものです。制度融資は、創業時だけでなく創業後も運転資金の調達の際は必要になるものです。
(2) 信用保証協会とは
信用保証協会とは、中小企業が金融機関から資金を借りるときに保証人になってくれる公的機関です。都道府県ごとに設置されています。なお信用保証協会は、保証の代行をするにとどまり、直接の融資を行うわけではありません。融資を実行するのは、銀行や信用金庫・信用組合の金融機関になります。
(3) 利用可能な事業者
利用可能な事業者は、中小企業基本法に定める中小企業者で、起業したばかりの企業も含まれます。なお、農林・漁業、遊興娯楽業のうち風俗関連営業、金融業、学校法人、宗教法人、非営利団体などの業種は利用できません。金融業などは幅が広いので詳細をチェックする必要があります。
(4)信用保証額
無担保保証だと上限は8,000万円ですが、東京都の創業融資の限度額は3,500万円、区の創業融資の限度額は大体1,500万円ぐらいに低く設定されています。融資限度額は自治体ごとに異なります。
(5) 信用保証料
融資をうけた場合には、銀行の利息だけでなく、信用保証協会に保証料を払う必要があります。保証料はリスクにより異なります。銀行への利子は毎月払いますが、信用保証料は借入時に一括前払いで払わなければなりません。信用保証協会は、融資額の80%を保証し残りの20%は金融機関が保証するのが原則ですが、創業融資では信用保証協会が100%保証します。民間金融機関はリスクなしで利息収入が得られるので信用保証協会の保証を付けることを融資の条件とするのが通常です。
(6)保証人
信用保証協会の保証をつける場合、社長は原則的に保証人にならなければなりません。ただし、経営者以外の第三者を保証人として求めることは原則禁止されています。
(7)地方自治体創業融資
制度融資を利用した自治体融資では利子補給や信用保証料の補助が厚い点がメリットとしてあります。ただし、地方自治体の制度融資は資金量が限られているので、融資額が少なくなる可能性があります。
また、制度融資は、銀行の審査と信用保証協会の審査が2重にあるので、審査期間が長くなる傾向があります。
参考に、東京都融資では
・融資額は、
①創業前なら『自己資金+2,000万円』
②創業後5年未満なら3,500万円
③分社化しようとする法人 3,500万円
・対象は、次のいずれかに該当するもの
①事業を営んでいない個人で、創業しようとするもの
②事業を営んでいない個人で、自己資金があり、創業しようとするもの
③創業(設立)した日から5年未満の中小企業者及び組合
④創業した日から5年未満であり、次のいずれかから出資を受けている中小企業者であること。
ア 東京都が出資するベンチャー投資法人傘下の投資事業有限責任組合
イ 独立行政法人中小企業基盤整備機構の「ベンチャーファンド」事業が出資する投資事業有限責任組合
⑤分社化をしようとする法人
・保証料は、保証協会の定めるところによります。信用保証料の補助制度あり。
・貸付金は、運転資金7年以内、設備資金10年以内(据置1年を含む)
なお区市町村の融資では、東京都杉並区「創業支援資金」の例では、下記の通りです。
・融資限度額 2000万円
・表面利率 2.00%
・本人負担率 0.50%
・利子補給率 1.50%
・貸付期間 運転7年、設備9年
公的創業融資の日本政策金融公庫 新創業融資制度、信用保証協会の保証による制度融資である地方自治体融資をみてきました。どちらを使うのも自由ですが大きな差は保証人の問題です。日本政策金融公庫の無担保無保証人の制度はやはり大きな利点と言えるでしょう。また、一般的には日本政策金融公庫の審査の方が短期間でしょう。地方自治体融資は信用保証協会の審査と、実際に融資する金融機関の審査が2重に必要になってくるからです。しかし、地方自治体の利子補給、保証料補助のプラス部分があります。いずれも事業計画自体の信用性がポイントになりますので甘い計画だと審査に落とされることがあります。
<参考リンク>
・【第1回】創業時から借りられる!政策金融公庫、自治体創業融資とは?
・TP Interview 004:株式会社i-plug HR&Business Innovation部 矢島慶佑(前編)