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2019.01.21

TP Interview 005:株式会社家’s 代表取締役社長 伊藤昌徳(後編)

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移住起業して体感した『地方創生』の難しさ。その土地に求められる『貢献』の形。

 

前半では、富山県 高岡市へ移住後、地方創生の取り組みを始めた伊藤氏に、起業とこれまでの人生に対するマインドについて語ってもらった。
後半では、実際に移住し起業を始めたこれまでの経験と、自身が肌で感じた地方での起業の実態について迫る。

TP Interview 005:株式会社家’s 代表取締役社長 伊藤昌徳(前編)~脱サラ後、手探りで地方起業に走り出し、地方創生のビジネスモデルを確立した経緯に迫る~

1.起業当初から今にかけて描いた、ビジネスモデルの変遷(これまでの失敗体験)

インタビュアー:現在のビジネスモデルに至るまで、失敗や色々な取り組みをしてきたとのことでしたが、どんな取り組みをしてきたんですか?

伊藤氏:
当初は、紹介してもらった古民家に子供たちを集めてプログラミングを学習するイベントを行っていました。
実際にこの取り組み自体も地元の新聞とかのメディアに取り上げてもらったりしたんですが、メインの事業にしていこうとは思えなかったんですよね。
2020年の義務教育に向けたITリテラシーを高めていくことで、田舎にも最先端の教育機会を提供できればと考えていたんですが、やってみてこの地域に必要なことってもっと他にある気がしたんです。

 

インタビュアー:なるほど。他にはどんな取り組みをされてきたんですか?

伊藤氏:
あとは、地域でマルシェを開催してみたり。
桜の時季に合わせて、地元の郷土料理や小物を販売して桜を見に来るお客さんに楽しんでもらおうと思ったのですが、悪天候に見舞われ結局はお客さんがほとんど来ない結果になってしまいました。
天候以外にも、運用の仕方にも問題があり、店舗を散り散りに配置してしまってイベント自体の賑わいが足りていなかったといった原因もありました。

あとは、古民家を活用したレストランをオープンする予定だったんですけど、パートナーさんとのコミュニケーションがうまくいかず、急遽そのプロジェクトを撤退させてしまったこともありました。そのパートナーさんにはたくさんの時間を使って頂いて、周囲から期待もされていたので本当に申し訳なかったです。というより、今も申し訳ない気持ちでいっぱいです。

どれもやってみて失敗して、新しい気付きが得られるので、これらを踏まえて次の施策を考えたり、ビジネスモデルを練り上げることができています。ただ、巻き込んだ方々にも迷惑がかかるので、失敗は苦しいものですよね。もちろん、そこでめげてはいけないと思っていますが。

 

インタビュアー:走りながら試行錯誤して、現在の高岡市の箪笥を使った、後世に文化を継承していく形の地方活性にたどり着いたんですね。

伊藤氏:
そうですね。ただ、実際に今の箪笥を使った取り組み自体も、まだまだ試行錯誤中ですし、去年の11月にオープンした古民家宿泊施設に関しても、まだお客さんで予約がいっぱいという状況でもないので、引き続きブラッシュアップしていく必要があります。

2.移住&独立をして分かったこと。地方起業の特徴

インタビュアー:実際に移住して起業をした後にどんなことが分かりましたか?

伊藤氏:
地方では、メディアが積極的に取り上げてくれることですね。
今までにやってきた、プログラミング教室や古民家でのイベント、今の箪笥のリノベーションの取り組みも地元の新聞社さんなどに取り上げてもらえました。

 

インタビュアー:なぜ、そんなにメディアは積極的なんですか?

伊藤氏:
もしかしたら、地方に移住して起業をしている僕に期待してくれているというのもあるかもしれませんが、単純に取り上げるネタが少ないっていう現状もあるのかもしれないですね。
ですので、地方でビジネスをやる上でメディアが協力的ということは、自分たちにとっても、多くの人に知ってもらえる機会になるので非常に助かります。

 

インタビュアー:現地のメディアも地域活性のために、協力的なのは助かりますね。

伊藤氏:
そうですね。
あと実感するのは、結局、地域の活性化って難しいことだと思います。地域活性化のために何か事業をやるとして、その地域がそもそもそれを求めているのかということが非常に重要だと思っています。たとえ事業が立ち上がったとしても、その地域に求められていないことであれば、自己満足で終わってしまう可能性もあります。自分も日々、そうならないように試行錯誤しています。

3.今後の展望

インタビュアー:なるほど。それでは、伊藤さんは今後どんな形で高岡市に貢献していくことを考えているんですか?

伊藤氏:
僕は、今の箪笥を使って職人さんと日本の文化、後世の人をつなぐプラットフォームを作っていきたいと考えています。
この構想は、この高岡市にいる職人の方々がいて成り立つことが前提となります。

あと、この箪笥プラットフォーム構想で、後世に日本の文化を残すことはもちろんですが、日本の良い文化を世界に発信していくこと、箪笥と職人さんやアーティストの方々などのクリエイターを組み合わせて新しい価値を生み出していくことを目指していきたいと考えています。

 

インタビュアー:日本の文化をよく知っている職人さんの感性で箪笥をリメイクしてユーザーに新しい価値を届ける。素晴らしいですね。新しい価値とはどういうことなんですか?

伊藤氏:
箪笥の再利用をするために、リデザインし、新しい価値として再生することです。
箪笥って使いづらいじゃないですか?場所も取るし、重いし。今の人たちの生活スタイルにはマッチしない。
でも、ここにある箪笥は古美やかな日本の文化を感じることができるものばかりで、このアンティークな箪笥を他の家具として再生することで新しい価値を生み出すことができると考えています。
たとえば、盆栽のはちを箪笥で作ってみたり、箪笥は箪笥でも鉄と組み合わせてみたり、箪笥の表面にレーザー加工を施してみたり、『長持』という古い家具があるのですが、ソファやテーブル、バスタブにできないかと企業や職人、アーティストと連携して、取り組みを続けています。

インタビュアー:箪笥のプラットフォームっていうのはどんな意味が込められているんですか?

伊藤氏:
箪笥とアーティスト、そして消費者をつなぐ世界を作ろうとしています。
今はECをつくっているところで、ここで再生された日本の古き良き家具を多くの日本人に知ってもらおうとしています。

 

インタビュアー:実際やってみて、プラットフォームの反響はどうなんですか?

伊藤氏:
今は商品づくりに力を入れているのですが、職人さんとしても新しい取り組みになるので、前向きに取り組んで頂けているかと思います。職人さんも色々なアイディアを持っているので、参考にさせて頂き、箪笥で積木を作ったりもしています。ひいおばあちゃんの箪笥で作られた積み木を孫が遊ぶというような世代を超えて箪笥が活用されていく流れをつくっていきたいです。

箪笥を活用した商品が10品以上できてきたら、空間デザインをやられている会社やリフォーム会社などに随時、提案していく予定です。

 

インタビュアー:今後伊藤さんがしていきたい地域の活性方法はどんなことですか?

伊藤氏:
高岡市に住む人を増やしていきたいと考えています。
人がいるから活気も出てくるっていうのは本当のことだと思っているので。

ですので、僕はそのきっかけを作りたいと思っています。

具体的には、地域に根付いた面白い企業を作ることで、富山に人を呼び戻す取り組みをしていきたいと考えています。
東京で活躍している地方出身の人の中には、今と同じような給与水準と同じようなやりがいがあれば、自分の田舎に帰りたいという気持ちは共通してあると思っていて。例えば、グーグルの本社が富山にあったら皆行くじゃないですか。(笑)
まだ何もできていないので、大変おこがましいんですが、自分が面白い事業を立ち上げて、ワクワクする仕事を作り出すことができれば、面白い人が集まり、少しずつですが地域が活性化していくと思います。今現時点では、「面白い仕事をつくる=地方創生」だと自分は思っています。もちろんしっかりと利益を出して法人税も収めていきたいです。

こういった地道な取り組みが、実は一番地域に貢献できるのではないかと、感じています。

4.独立のアイデアを得るための取り組み(独立までに心がけた方がいいこと)

インタビュアー:起業のアイデアってどんなところから生まれると思いますか?

伊藤氏:
人と会って話すことが大切だと思います。
新しい環境も大事かもしれないけど、やはり影響力が大きいのは人だと思います。
考え方が参考になったり、色々なアイディアがもらえたりするので。
意識して、新しい人に会い続けると得られるものがたくさんあると感じています。

僕もそれを心がけていて、新しいことが浮かばない時は積極的に人に会うようにしています。

 

インタビュアー:人からインスパイアされるものって大きいんですね。
現在に至るビジネスや、様々なプロジェクトに至る機会っていうのはどんなところから得られるんですか?

伊藤氏:
これも同じで人と会うことですね。
ここでは、人と会って自分のやりたいことを伝えていくっていうことが大事だと思います。

例えば、自分はイベントに参加すると、自分のやりたい事、少し始めているプロジェクトなどを積極的に話すようにしています。すると共感してくれたり、それだったら自分はこんなことができるよと提案してくれたりします。
それが、たまたま今回の形で富山の古民家を紹介してもらったことに繋がりましたし。

だから、何をしていいかわからないけど起業とかに興味がある、という人は尚更、人に会ってアイデアを見つけるといいかもしれないですね。yentaのようなビジネス版tinderのようなサービスもありますし、全国どこでも様々なイベントが開催されているので、一人で悶々としてきたら、人に会ってみるのは意味のあることだと思います。

 

インタビュアー:これから、一歩を踏み出す方々にメッセージをお願いします。

伊藤氏:
打席に立つこと、今あるものに全力を注ぐことが大切だと思います。
僕は、数年前までは富山県も箪笥についても起業アイデアとして持っていませんでした。
ただ、目の前にあることに全力でぶつかっていって試行錯誤した結果がここです。

 

インタビュアー:参考になります。
漠然とした形や、当初の少ない自分のパイで戦うにあたって、伊藤さんのように一旦走り出してみて、色んな環境の要素や機会を得ていくっていう方法があるんですね。

伊藤氏:
人のタイプにもよると思いますけど。
僕の場合だと、逆算して考えていくというのがあんまり得意なタイプではないので(笑)
自分に合った方法で、実行しながら、良いと思ったものは全部やるっていうスタイルになったんです。本当になんでもやっていますね、全部やりきってみてそれから考えています。
これも、打席に立ち続けて、失敗しないことには成功はないと思っているからです。

インタビュアー:環境や機会で自分の考え方も柔軟に変化させて、そこにあった方法で走り続ける。
そのストイックな姿勢を保つ秘訣はありますか?

伊藤氏:
誰が見ているわけでもないし、結構難しいことだと思います。
僕の場合は、今10年日記というものを書いています。
一日3行の日記なんですが、その日学んだことを振り返る取り組みとして、始めました。

この振り返りは結構大事だと思っていて、その日の「できごと」と「学んだこと」を書くんですけど、何も書くことが無かったら何も学びがなかった、意味がない一日ってことになるじゃないですか。
起業したてのころは、自分で一つ一つ積み上げていく必要があるので、そんな一人で頑張る時こそ、自分を見つめ直すタイミングが大事だと思います。なので、引き続きこの日記は実践していこうと思っています。

インタビュアー:ありがとうございました。

 
 

<取材を終わって>
地域活性化の取り組みを軸に、ほぼ何もない状態で走り出し、移住起業に踏み切った伊藤氏。当時から現在の取り組みについてイキイキと語っていた。
当時は何もなかったかもしれないが、起業に踏み込んでから一つ一つのチャンスやご縁、地域の人々と真摯に全力で向き合うことで、少しずつ地域に貢献をする形を作り上げている。

『まずは打席に立つこと』
このチャレンジ精神を胸に突き進む伊藤氏の姿勢から、何事も挑戦が無ければ生まれないことを再確認させられた。今後、地域活性に取り組む伊藤氏の周りにどんどん活気が出てくるのだろう。

<参考リンク>
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姉妹メディア『The SIDELINE』より
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